2009年9月2日水曜日

20、打ち逃げ

 以前の記事「8、潰しポケモンの選択①」では潰しパが受けを突破する上でダメージ蓄積が欠かせないことを述べた。そして、具体的なダメージ蓄積の方法として

【3、いかにダメージ蓄積をさせるか】
・ねこだましによる無償ダメージ
・ステルスロックや砂嵐などの定数ダメージ
・交換読みとんぼ返りによるダメージ
・交換時の打ち逃げダメージ
・毒ややけどの状態異常ダメージ

 を例として挙げた。今回の記事ではこれらの項目の中で最も原始的なダメージ蓄積である「打ち逃げ」について考えてみる。

 元来ポケモンは相性が非常に重要なゲームであるので、実は打ち逃げは言うほどダメージ効率の良い方法ではない。というのも、こちらの攻撃に対して最も相性の良い受けで受けられるとほとんど十分なダメージを与えることができないためだ。ジバコイルの10万ボルトをハピで受けられた時などが良い例で、50%以上のダメージを与えられない以上、流されるターンのタマゴうみで蓄積ダメージは完全に取り除かれ、それどころかダメージ量が20~30%程度では回復ではなく流しターンに電磁波やステルスロックを撒かれて一方的にアドバンテージを失うことにつながる。

 つまり、何の考えもなしに打ち逃げをしていては受けにとって致命的なダメージ蓄積は望めないということである。

 しかし、現環境には誰を出しても受けられないような超破壊力の潰しが何体かおり、このような潰しの打ち逃げはとんぼやステロなどとは比べ物にならないくらいの大ダメージの蓄積を望める。よって、上級者のパにはこのような「受けられない超火力」が仕込まれていて、ナンス・ハッサムなどの無償降臨から問答無用でパを崩しに来ることが多い。一番有名な例はボーマンダで、珠竜星群を打ち逃げするだけで十分な対策をしていないパは簡単に崩れてしまう。よって、テクニックとしてマンダの竜星群を「読んで」ハピナスやミロカロスでいったん受けに行き、特攻が下がったところで物理受けに変えるなどというかなり危険な橋を渡ってマンダを流しにかかったりする。もちろん、読みが外れて竜舞が来たり、ハチマキドラゴンクローが飛んできた、などの可能性もあるためマンダに対する安定な受けは伝説ポケモンを除けばありえない。

 前々回話題に挙げたドサイドンも打ち逃げ能力は最高レベルで、ハチマキエッジや地震を無事に受けることは相当困難である。実は岩タイプの技と言うのは打ち逃げに非常に優れており、ジーランスのハチマキ諸刃などもかなり危険である。

 竜星群もエッジも打ち逃げする上で重要な「無効タイプがない」「半減しにくい」の2点を満たしているのも注目すべき点である。一方、「ドロポン、大文字、インファイト、リーフストーム、10万ボルト、吹雪、キネシス」などの他タイプの主力技を考えてみると半減が容易であったり無効タイプがあったりするのがわかる。また、そもそも威力不足で打ち逃げに適さないタイプも少なくない。「噛み砕く、シャドーボール、とんぼ返り」等が主力技の悪、霊、虫などである。ただし、虫についてはとんぼ返りのメリットが大きいので打ち逃げと単純に比較することはできない。

 打ち逃げをするにあたっては一撃の蓄積ダメージが50%を超えることが望ましく、このような厳しい基準を満たすためには十分な攻撃種族値に加えて「ハチマキ、メガネ、珠」の使用がほぼ必須となってくる。素の攻撃力で十分な決定力を出すことはほとんど不可能であるし、積み技を使うのは居座りが前提で1ターンを投資しているので打ち逃げのコンセプトと矛盾する。

 打ち逃げがダメージ蓄積に有効なのはわかったが、打ち逃げの最も難しいところはそもそも打ち逃げに適するポケモンが比較的少なく、しかも起点を用意してやらないと「打つ」ことができないところである。つまり、マンダもドサイドンもスターミーの前では「打つ」事は不可能であり、こちらが流される立場にあるのでむしろスターミーに打ち逃げを許してしまう。タイマンで勝てる相手に対峙したときに流し際で最強技を叩き込むのが打ち逃げなので、タイマン性能が低ければ低いほど「打つ」タイミングは得にくい。

 よって打ち逃げによるダメージ蓄積を狙う場合は起点の求め方に工夫が必要となり、起点を呼び込めるようなパの組み方をするのが望ましい。ナンス(クラゲやミロシャワをアンコ)+マンダとかスターミー(ハピカビを呼ぶ)+ドサイドンなどの有名な組み合わせを組み込むだけでも打ち逃げは狙っていけるが、他にもうまい組み合わせがあるかもしれない。

 ところで「打ち逃げ」という表現を自然に使っているが、この表現の意味するところは「ある潰しが絶対安定な相手に対峙したときに、誰が交換出しされてきても構わないように威力の高い技をぶっ放す。交換先に蓄積ダメージを与えたらすぐに引っ込む」というところであろうか。めざ氷のないゴウカザルに対してボーマンダが珠竜星群、ハピナスに対してドサイドンがハチマキエッジなどの状況は、相手からこちらへの決定打がなく安定であり、かつ交換先にダメージを与えた後は引っ込むのが前提となっているように思えるからだ。もちろん、突破可能なら「逃げ」る必要はないのだが、多くの場合能力の下がった特殊マンダは下がった方が良いし、ドサイドンは交換先よりも確実に遅いだろうからダメージを与えたらさっさと引っ込むのが安全だろう。誰が言い出したのかは知らないが、なかなか的を得た表現だと思う。

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